2023/07/12 21:41


写真提供:IBC


ーブラジル・ワヒネプロ、チリ・アントファガスタでの2連勝おめでとうございます。2戦を振り返ってどうでしたか?

去年はコロナが収まって久々のフルツアーだったので、自分の中であまり集中できていなかったんです。成績自体は悪くなかったと思いますが、勝ち方を忘れてしまったような感覚で。今年はここで勝ったら次の試合が楽になるとか、全体を意識しながらできた2戦だったと思います。

ブラジルの試合は日本が優位なんですよ。
というのも、ワヒネプロの会場の波はすごく日本に似ているんです。波質が柔らかくて、そこまで大きくなくて、ビーチブレイクで。
大きな波に慣れている海外の選手は少し苦戦している印象があって、あとトップの選手が何人か来ていないのもあってチャンスだと感じました。
今年は、全6戦のうち5戦のポイントが高いので、1回の優勝でもすごく優位になると思い、すごく集中しましたね。
ビーチブレイクの試合は心地よく出来て、次のチリではリーフブレイクなので戦略を変える必要はあったけど、大会全体のジャッジクライテリアや、点数の出方、選手のコンディションなんかを観察して、その上で自分はどうしたらいいのか、どういう風にすれば勝ち上がっていけるのかを考えました。
今までは正面からぶつかる感じだったんです。うちの家族は「全部勝てば優勝なんだから!」「全部優勝すればチャンピオンなんだから」という考え方で(笑)それでずっとやってきたんだけど、全てを勝つのって簡単ではないから。


ー全部100%で行くのは大変だ!

そうなんです。
それで、優勝ができないなら2位、2位になれなかったらセミファイナルまで勝ってとか、考え方を変えて。
波との向き合い方は都度変わるとは思うけど、1年のランキングを意識して戦ったかなと思います。


ーチリの波はどうだった?結構サイズがありそうだったけど。

前半がファンウェーブ、途中でサイズが上がって、最終日にむけてサイズダウンしていく感じでした。
2019年はパーフェクト10を出せるくらいのいい波だったような覚えがあるんですが、今年はスウェルの向きがあまりよくなくて、いつも以上に乗りづらかったです。




【掘れ上がる波、”スラブ”の経験が、チリでの優勝を導いた】


ーその中で決めていって優勝というのはやはりすごい。

実はリーフブレイクは好きなんですけど、好きなだけで得意ではないのでどうしていこうかという気持ちがあったんです。今回のブラジルとアントファガスタの間にイキケで特別試合があったんです。普段はIBCの1戦なんですが今年はならなくて、お祭り的な国際大会で。
時間があったし楽しそうだから出ることにしたんですが、大会の合間合間に地元の人たちに色んなポイントに連れていってもらって。ランキングが関係ないからリラックスサーフィンをして。そこからリーフブレイクがさらに好きになったんです。
チリの北側はリーフブレイクが多くて、スラブという短いけどすごく掘れてる波があるんです。長くは乗れないけど、テイクオフポジションからすごく掘れていてチューブに入ったり、それがすごく楽しくて。


ーボディボードには最高の波だね!

そうなんです。最初はちょっと怖いけど、慣れればどんどん楽しくなって。そのおかげでイキケの試合も楽しめて。リーフってこんな風に乗るんだって。
そこからのアントファガスタだったので、怖いというよりも、この波でこういう風に乗っていこうという気持ちになれた。大きくても小さくても苦手なリーフブレイクの感覚がつかめて、視点も変わりました。


ーリーフブレイクってどういう風に乗ったらいいの。

砂と違って動かないじゃないですか、地形が。だから、どこで割れるかっていうのをなるべく把握して。
みんながどこで技をしているかというのを見て、そこで自分も技をかける。
後はうねりの向きがとってもシビア。ビーチブレイクって一日の中で色んな波が割れるけど、リーフブレイクは、例えば今日はこのうねりだから良くない、明日はこのうねりだからいい。良いうねりの中でももっとベストなうねりがすごいこうシビアにあって、それをどれだけ選べるかだと思います。



【世界チャンピオン大原沙莉のボディボード革命!??】


ーチリの試合で、ハイライト映像にも登場していたんだけど、ヒート前なのかな、沙莉ちゃんがボードを顔の高さまでかかげて、すごく真剣な表情をしていた。あれがすごく印象的で、どんなことを思っていたんだろうって。覚えてる?

覚えてます!(笑)
リーフブレイクで他の選手の方が上手だってわかっている中の試合で。
でもそれでも、どうせ勝てないからじゃなくて。その中でじゃあどうしたら勝てるのかっていうのをすごく考えながら試合してるんですよ。もちろんいつもそうなんですけど。
今回はその中でもすごく勝ちたいという気持ちが強くて、去年のモルディブぐらいから、ボディーボード革命があって。


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ー革命!???

そう、革命があって(笑)
「ボディーボードって本当はこういう風にやるんだ!」って。
革命以来、去年のモルディブから、ハワイで練習して、ボードもどんどん変えていったんです。
だから頑張りたい、絶対に勝ちたい。そんな中で信じられるものは何だろうと考えた時に、自分の体、知識、そしてこのボード。だから、「うちらだったらやれるよね、頑張ろうね」ってボードに語りかけていました。時々やってるんですけど。


ー世界の頂点に立っても進化し続けてるんだ。革命か。ボディボードは本当はこんな風にやるんだって、いうのは具体的にどんな感じ?

私が普段入る日本の波って、パワーがない中でも大きなエルロロを演出しなくちゃいけない。
自分の力でスピードを出して、自分の力で大きく飛ばなきゃいけないから、深くボトムターンをして、わざと落としてそこからストレートにリップに当てることで大きさを演出してたというか。

でもモルディブの波はそれが通じなくて。それだと乗れないの、ほんとに。落としたら波が崩れて行っちゃう。
強制的に先に進まないといけない。進んだ先で何かをしなくちゃいけない。そういう波だったなと思って。
その時に気づいたのが、ボディーボードって本来これじゃない?って。
海外の選手はそこまでボトムターンがかかってない。
自分はもっと落としたいんだけど、でもみんなはそこまで落としてない。
私たちが何で落とすかというと、スピードが生まれるから。でも海外はそもそも波にパワーがあるから、落として自分でスピードをつけていくということが必要ないんです。
分かってはいたんだけど、実際分かってなくて(笑)
それを強制的にやらされたことによって、落とさなくてもやっていけるんだ、ということに気づけた。
頭じゃなくてフィジカルで。体で実感できた。
そこから自分のボディボードが変わったんです。


ーアントファガスタですごいカッコイイARSを決めていたけど、あれは最初から狙っていた?

ずっとARSの練習をしていて、成功率がぐんと上がったんです。革命以来。
ハワイでも決まる、日本でも決まるようになって、だから絶対に海外の試合でやりたいと思っていて。
今までは決まるかどうか分からなかったからできなかった。博打すぎて。ARSができるかできないかで波選びをするほどです。
あの時の波は、自分の中でできるかもと思って、一発エルロロをして6点が出て、自分の中でいいペースができた。
次の波ではARSのルートがあった、そのルートが描けたからやってみようと。
でも実際映像でみたらあんまりかっこよくなかったかなって(笑)シチュエーションに点数がついたのかなって。後からジャッジに聞いた時に、着水がクリーンだったこと、女子の中でARSをしている人があまりいなかったので『新しいもの』ということに点数がついたそうです。でも自分の武器となるARSができるようになったのかなって思います。


【南米のボディボードシーンと南米ライフ】


ーブラジルとチリのアマチュアもプロも含めて、日本とはボディボードの熱量はどんな感じ?

南米って、サーフィンボディボード含めて、人口が多いんです。
チリはここ10年で急激に増えたかなって。特にメンズの選手が増えたか印象があります。
ウィメンズはブラジルの選手がすごく多いですね。


ー何が違うんだろう

波や環境だと思います。
チリはライブ映像を見てて分かると思うんですけど、リーフで浅く危険なのでなかなか始めにくいのかなって。ブラジルは日本と似ていて始めやすいし、上達しやすい印象を受けました。
日本のボディボードってブラジルをお手本にしてきたし、それが今でも日本のボディボードスタイルになっている。


ーさりちゃんは、海外廻りはじめてからもう何年目になる?

16歳から廻り始めたから、、、。
私この間28歳になったんですよ!
だから、、12年!?


ーベテランだね!
最初は彩加と一緒に廻っていて、7〜8年くらい前から一人で行くようになりました。
私は他人に頼っちゃうところがあるから、自分でできるようにしようって思って。


ー当時の自分と比べて一番変わったところってどこ?
一番は英語です。結構好きだったから喋ってたけど、以前より2倍も3倍も話す機会が増えて。日本語は使わずに英語だけを話す。これで英語力が伸びたと思います。
あとは旅の段取り。飛行機の取り方、トランジットの過ごし方。荷物の中身も変わりましたね。さらにミニマリストを目指したいけど、それはなかなか難しいです。滞在が1ヶ月を超えるとどうしても荷物が多くなります。

ー遠征中はホテル滞在?
基本的にはAirbnbで、キッチンや洗濯機があって普通に生活できるような過ごし方です。洗濯してご飯作って海入って。

ー日本食を食べたくならない?
それが、全然ならないんです。日本食は好きなんだけど、お米持っていかなきゃとか味噌汁持っていかなきゃとかないんです。

ー試合が決まって実際に旅立つまではどんな流れ?

まずは試合の日程を確認して飛行機をとります。それからルートを考えて宿泊先を探します。たまにホテルの主催者側でホテルを用意をしてくれることもあるんです。そして行き先国のリサーチ。治安や気候など、自分で調べたり、分からないことは人に聞いたり。試合のエントリーは基本的にホームページでできるんです。
移動は大体1日以上かかります。


ー現地での移動の足は?

基本的に車は借りないんですよ。空港から遠い時は借りることはあるけど、なるべく大会会場の近くに泊まって、歩いて移動します。
海外はタクシーが安いので、必要に応じてタクシーも利用します。すごくリッチな感じに聞こえますけど、目的地まで乗っても480円とか。バスなんかもう100円以下とか。
バス停はあるんですが、バスは無視(笑)自分の好きなところで呼び止めて、降りたいところでボタンを押して降りる、自由な感じ。どこまでいっても一律料金。チリはバスがたくさん走っていて、待っていれば10分以内にすぐくるんです。

ー住みやすいね!

結構住みやすいかもです。チリは治安も良いし物価も安いし。

ー滞在中はどんな食事を作ったの?

基本的にジョアナと旅をしているので、お肉は食べない。じゃがいもを茹でたりサラダを作ったり。結構ジョアナに作ってもらったりしてます(笑)お料理がすごく上手で。


【2023年は戦略的に頂点を目指す】



ー次の試合の意気込みをお願いします。

ブラジル、チリと2戦優勝できて、次のモルディブは3戦目で折り返し地点のようになるのかな。
今回どっちも自分に味方してくれた波だった、というのがあるんです。ブラジルは日本人向きの波だった、他の選手のほうが苦手意識があった。チリでは波がすごく良かったわけではないので、その中でマシな波に乗れた人が勝ち上がった。両方とも『運』要素があったように感じています。もちろん、どんなコンディションでもやれるというのは、それは試合で重要な要素であるとは思います。次戦のモルディブは去年初めて行ったんですが、毎日が良い波だった。選手全員が波がよかったまた来たい!という程。
ということは全員がベストな状況で戦えるという怖さがあります。だからリザルトを高望みをするのではなく、トータルで考えて戦っていこうと思っています。
全6戦あるんですけど、ランキングに反映されるのは上位4戦なんです。そのうちの2戦を優勝できているので、安定はしているのかなと思います。なのでまずはセミファイナルまで(笑)
良い波だからこそ、技術面で自分のできることを増やしていきたい。それがリザルトと直結しているかというと、今はまだしてない。


ーPRしたいことがあれば


何年か前からボディボードレッスンをプライベートレッスンとオンラインレッスンでやってるんですけど、自分のボディボードのスキルが少しずつアップデートされていくことによって私のアドバイスもアップデートされていく。例えば3年前に言ったことと、今言うことが少し違ったりしますボディボードのトレンドもあるからなんですが、私が言っていることは結構最先端をついているのかなと思っています。
ボディボードの体の動きってすごく分かりにくいんです。
寝そべっていることと、体半分が海に浸かっていることで、見えにくい、わかりにくい、伝わりにくいのでそれが皆さんのレベルアップを妨げているのかなと。
私の言葉だったりとか経験、教わったこと、自分で気づいたことを伝えていってレベルアップの近道になれたらなと思います
あとは、試合のやり方に長けていると思っているので、大会に向けてのヒート練習だったり、作戦の立て方のアドバイスもしています。
公式LINE大原沙莉でやっているのでお申し込み、お問い合わせ、お待ちしています。



まだ今年始まったばかりであと4戦大会があるので、時差もありますがよければリアルタイムでライブ配信を見て、ぜひ応援よろしくお願いします。


→大原沙莉ボディボードスクールは

https://sariohhara.wixsite.com/sariohhara/blank-1